この記事を読んでくださっているみなさんは海外の薬を飲むことに抵抗がありますか?
わたしもオーストラリアに来た当初は海外の薬を使うことに抵抗がありましたし、もともとオーストラリアに住んでいた日本人からは「オーストラリアの薬は強いから使わない方がいい。」と言われてきました。ですのでこちらに住む日本人のほとんどの人は日本から送ってもらったり、割高で日本の薬を買ったりしています。
やっぱり薬は自分の体に入るものだし海外のものを使うのはちょっと怖いという気持ちもすごくわかりますが、だいたいの人は先入観や固定概念で怖いと決めつけてしまっているだけです。オーストラリアの人たちはその薬を愛用しているので危険なわけがないんです。
世界における薬について知ることで安心して海外の薬を使うことができますので不安のある方はぜひ読んでみてください。
薬の基礎
海外の薬が怖いと思われる理由としては薬についてよく理解できていないから、安心して内服するために簡単に薬の基礎について説明させていただきます。
商品名と一般名
みなさんは薬には商品名と一般名という二つの名前があるのをご存知ですか?
商品名:製薬会社がつけた薬の名前
一般名:薬の主成分の名前(近年ではほとんどの薬がWHOの決定により世界共通一般名として使用されている)
ロキソニンを例に商品名、一般名について説明させていただきます。
ロキソニンの一般名はロキソプロフェンナトリウム水和物と言います。しかしこれは単なる成分名であり、これを各国にある製薬会社が商品として売り出す際には商品名がつきます。聞き覚えのあるロキソニンは第一三共がロキソニンという商品名で発売した薬です。
つまり一般名は一つだけど商品名は各製薬会社によって違うので製薬会社分の商品名があるということになります。
・第一三共:ロキソニン
・サワイ:ロキソプロフェンNa60mg
・EMEC:ロキソプロフェン錠60mg
上記のように商品名は若干違いますが、全て同じ『ロキソプリフェンナトリウム水和物』です。
それを海外に置き換えても同じことで、世界で決められている一般名は世界共通に使用されており、その国の製薬会社が日本とは別の商品名で販売しているため全くの別の薬に感じてしまうだけで実は同じ薬なんです。(薬事法は国によって違うので販売するときの成分量は多少違いがあります)
日本では鎮痛剤として愛用されているロキソニンですが、実は海外ではあまり使用されていないんです。その理由はロキソニンによって胃が荒れるからだそうです。逆に海外の方が日本に来た時にロキソニンが主流であることにびっくりするかもしれませんね。
カロナールについて
前述しましたが海外ではロキソニンはあまり使用されていないので、オーストラリアでもロキソニンはあまり販売されていません。その代わりロキソニンより優しいカロナールが解熱鎮痛剤として主流です。
カロナールは日本でも解熱鎮痛剤として処方されることが多いので知っている人も多いのではないのでしょうか。
日本ではカロナールという商品名でお馴染みのこの薬ですが一般名はアセトアミノフェン。海外だとロキソプロフェンよりもこのアセトアミノフェンの方がより一般的に使用されています。アセトアミノフェンはロキソニンに比べて胃を荒らすなどの副作用が少なく、子供や妊娠中、授乳中にも使用できる比較的優しい薬です。
Panadol (パナドール)
オーストラリアではこのアセトアミノフェンがPanadol(パナドール)という商品名で販売されています。このパナドールはスーパー、薬局、コンビニどこでも手に入るオーストラリアに来たら誰もが必ず目にする商品と言っても過言ではない代表的な解熱鎮痛薬です。
このパナドールですが『Paracetamol 500mg』と表記されていますよね?
少しややこしいのが先ほど説明したアセトアミノフェンではないじゃないか!とお思いになるかもしれませんが、アセトアミノフェンとParacetamolは同じです。
*アセトアミノフェンはアメリカや日本、ParacetamolはWHOに指定された世界的な名称という違いだけで中身は全く同じものです。
つまりこのパナドールは日本で販売されているカロナールと同じ薬なんです。ただカロナールとパナドールの違いは主成分の含有量です。
写真を見比べるとわかるのですが、
カロナール:200mg
パナドール:500mg
とパナドールの方が1錠に含まれているParacetamol (アセトアミノフェン)の含有量が多いことがわかります。
一般的にカロナールは成人であれば1回2錠つまり1回400mgを内服します。
パナドールの使用方法には12歳以上であれば1回1〜2錠内服つまり1回500mg〜1000mg内服と記載されています。(そもそも海外の人は日本人よりも体格が大きい分、その体格に合わせて薬が作られているので薬自体の含有量が多くなるのは仕方のないことです。)
日本人がオーストラリアの薬が強いと感じるのは多分ココです。
カロナールを1回分(200mg×2)内服するよりもパナドール1錠(500mg)内服する方が100mg分強いですよね?
100mgの差なら大したことありませんが、もしパナドール2錠(1000mg)を一回で内服したら600mg分の差が生じるので中には強すぎると感じる人がいるのかもしれません。
つまり日本人はパナドールを1回に1錠(500mg )内服すれば日本で処方される量(カロナール400mg)とほぼ変わらずに同じ薬を内服できるので、わざわざ日本から送ってもらったり割高で買ったりする必要はないし、手持ちがなくて急に薬が欲しいと思った時にこの情報さえ知っていれば安心して近くのコンビニで買うこともできます。
わたしも実際にパナドール愛用していますが、今まで特に問題はありませんでした。強い効果が欲しい時には1回に2錠内服することもありますがそれも問題ありません。
Paracetamol (アセトアミノフェン)は成人であれば1日4000mgまで内服可能です。
(1回1000mgを上限に4〜6時間空けて1日4回まで内服可能。)
このように薬は世界共通で定められているためどこの場所でも同じ内容の薬を安心して使用することができます。ただし体格の差で薬の量が違うのでそこだけ注意が必要です。
パナドールの種類
パナドールにはいくつか種類がありますので以下でそれぞれについて紹介していきます。
Tablets
有効成分(1錠) | Paracetamol (アセトアミノフェン):500mg |
特徴 | 特になし。一般的なパナドール。 |
使用方法 | 12歳以上:1回1〜2錠 4〜6時間空けて(最大1日8錠まで) 7〜12歳:1回0.5錠〜1錠 4〜6時間空けて(最大1日4錠まで) |
Optizorb
有効成分(1錠) | Paracetamol (アセトアミノフェン):500mg |
特徴 | Tabletsよりも速く効率よく体に吸収することができる。 |
使用方法 | 12歳以上:1回1〜2錠 4〜6時間空けて(最大1日8錠まで) 7〜12歳:1回1錠 4〜6時間空けて(最大1日4錠まで) |
Mini Caps
有効成分(1錠) | Paracetamol (アセトアミノフェン):500mg |
特徴 | 小さいカプセルでできているため飲み込みやすい。大きい錠剤が苦手な方や飲み込みがうまくできない方向け。 |
使用方法 | 12歳以上:1回1〜2錠 4〜6時間空けて(最大1日8錠まで) 7〜12歳:1回1錠 4〜6時間空けて(最大1日4錠まで) |
Extra
有効成分(1錠) | Paracetamol (アセトアミノフェン):500mg カフェイン:65mg |
特徴 | カフェインが含まれているので元気が欲しい方はこちらがおすすめ。 |
使用方法 | 12歳以上:1回1〜2錠 4〜6時間空けて(最大1日8錠まで) |
Suppositories
有効成分(1錠) | Paracetamol (アセトアミノフェン):500mg |
特徴 | 座薬。経口で内服できない方。 |
使用方法 | 12歳以上:1回2錠 4〜6時間空けて(最大1日8錠まで) 10〜12歳:1回1錠 4〜6時間空けて(最大1日4錠まで) |
こども用パナドール
パナドールにはこども用も複数種類ありますのでそれぞれ紹介していきます。こどもの薬は自分のことよりも心配になってしまうと思います。ぜひこの記事を参考にしてみてください。
日本では『通常、小児にアセトアミノフェンとして体重1kgあたり1回10mg~15mg を使用する。使用間隔は、4~6時間以上とし、1日総量として60mg/kg を限度とする。』という規定があります。
0〜1歳
Color free Baby Drops 1 Month – 1 Year
有効成分(ml) | Paracetamol (アセトアミノフェン):100mg |
特徴 | 生後1ヶ月から使用可能。液体タイプ。着色料不使用。 |
味 | さくらんぼバニラ味 |
月齢 | 体重 | 量 |
1〜3ヶ月 | 4〜6kg | 0.6〜0.9ml (*アセトアミノフェン60mg〜90mg) |
3〜6ヶ月 | 6〜8kg | 0.9〜1.2ml |
6〜12ヶ月 | 8〜12kg | 1.2〜1.5ml |
1〜2歳 | 10〜12kg | 1.5〜1.8ml |
体重1kgあたりParacetamol(アセトアミノフェン)1回10mg〜15mgと日本での規定がありますが、その規定からも逸脱していないので量的にも安心して使用することが可能です。
例) 4〜6kgの場合:4〜6kg(体重)×10mg〜15mg (Paracetamol)=40mg〜90mg /1回投与量
Suppositories 6 Months – 5 Years
有効成分(1錠) | Paracetamol (アセトアミノフェン):125mg |
特徴 | 座薬。経口内服が不可能な場合。 |
年齢 | 体重 | 量 |
6ヶ月〜3歳 | 8〜14kg | 1錠(1日最大4錠まで) |
4〜5歳 | 16〜18kg | 2錠(1日最大8錠まで) |
1〜5歳
Color free Suspension 1-5 Years
有効成分(ml) | Paracetamol (アセトアミノフェン):24mg |
特徴 | 液体タイプ。着色料不使用。 |
味 | いちご味、オレンジ味 |
年齢 | 体重 | 量 |
1〜2歳 | 10〜12kg | 6〜8ml (*アセトアミノフェン144mg〜192mg) |
2〜3歳 | 12〜14kg | 8〜9ml |
3〜4歳 | 14〜16kg | 9〜10ml |
4〜5歳 | 16〜18kg | 10〜11ml |
Chewable Tablets 3+
有効成分(1錠) | Paracetamol (アセトアミノフェン):120mg |
特徴 | チュアブルタイプなので水がなくても口の中で容易に溶ける。 |
味 | さくらんぼ味 |
年齢 | 体重 | 量 |
3〜6歳 | 14〜19kg | 2錠 |
6〜9歳 | 20〜27kg | 2〜3錠 |
9〜11歳 | 28〜35kg | 3〜4錠 |
11〜12歳 | 36〜41kg | 4〜5錠 |
Suppositories 6 Months – 5 Years
有効成分(1錠) | Paracetamol (アセトアミノフェン):125mg |
特徴 | 座薬。経口内服が不可能な場合。 |
年齢 | 体重 | 量 |
6ヶ月〜3歳 | 8〜14kg | 1錠(1日最大4錠まで) |
4〜5歳 | 16〜18kg | 2錠(1日最大8錠まで) |
5〜12歳
Color-Free Suspension 5-12 Years
有効成分(ml) | Paracetamol (アセトアミノフェン):48mg |
特徴 | 液体タイプ。着色料不使用。 |
味 | いちご味、オレンジ味 |
年齢 | 体重 | 量 |
5〜6歳 | 18〜20kg | 6ml |
6〜7歳 | 20〜22kg | 6〜7ml |
7〜8歳 | 22〜25kg | 7〜8ml |
8〜9歳 | 25〜28kg | 8〜9ml |
9〜10歳 | 28〜32kg | 9〜10ml |
10〜11歳 | 32〜36kg | 10〜11ml |
11〜12歳 | 36〜41kg | 11〜13ml |
Suppositories 5-12 Years
有効成分(1錠) | Paracetamol (アセトアミノフェン):250mg |
特徴 | 座薬。経口内服が不可能な場合。 |
年齢 | 体重 | 量 |
5〜8歳 | 18〜25kg | 1錠(1日最大4錠まで) |
9〜12歳 | 28〜41kg | 2錠(1日最大8錠まで) |
Soluble 7+
有効成分(1錠) | Paracetamol (アセトアミノフェン):250mg |
特徴 | 溶けやすいタブレットタイプ。 |
味 | いちご味 |
年齢 | 体重 | 量 |
7〜10歳 | 22〜32kg | 1〜1.5錠(最大1日6錠) |
10〜12歳 | 32〜41kg | 1.5〜2錠(最大1日8錠) |
さいごに
パナドールは日本でいうカロナールと同じ成分で作られているのでこどもから大人まで安心して使用できる薬です。ただし体格の差があるため販売されている量が違っているのでそこさえ注意して内服すれば日本で購入して内服するのと大きく変わりません。安心して海外生活を送るためにも知識として持っておくといざというとき便利です。